HOME > 書評目次 > ポルトに花束を ‖ 読書の記録

ポルトに花束を

知的障害者のヴィリーは町のアウトサイダーで、住人たちからは冷たい扱いを受けていたが、なぜかポルトとは仲がよかった。ある春の日にポルトは気のいいヴィリーから野草の花束をもらう。しかしその数時間後にヴィリーは崖から落ちて死んでいるのが発見される。警察はそれを事故死と考えるが、どうもヴィリーの死に納得のいかないポルトは再び独自で聞き込み捜査を始める。するとヴィリーをからかっていた小学生悪ガキグループやら、資産家の道楽不良息子やら、意地の悪い農夫やら怪しい人物が次々と出て来て……。

1作目の『ポルト泣く』はグラウザー賞を受賞したが、私個人としてはこの2作目のほうが好きである。1作目よりも登場人物のバリエーションに幅があるので、話に勢いがある。特に悪ガキグループのリーダー、クラウスがやんちゃで、その存在が面白いアクセントになっている。またポルトは子供の扱いもうまいらしく、上手にクラウスの秘密に近づいていくのだ。2人のユーモラスなやりとりがほほえましい。

勿論ポルトは子供だけを相手にしているのではなく、この作品では半恋人カーリンとの仲も多少進展する。(しかし前作から2年経った設定になっているのに、2人がまだ恋人同士でないというのはちょっとのんびりし過ぎているような気がしないでもない。)またポルトの唯一の同居生物、チェルノホルスキーというオス猫が行方不明になってしまい、ポルトの心は千々に乱れる。
こんな日常の中で少しずつ少しずつヴィリーの死の真相が解き明かされていくのだ。

事件の真相は前作よりずっと複雑で、そういう意味では推理小説の体も十分になしている。ただ私はこれを推理小説としてというよりは、ポルトと架空のワイン町ブルンドルフのファンとして読んでしまう。
ブルンドルフは言うなれば農民だらけの退屈な田舎町だし、ポルトはただの太った中年独身男である。その町を著者のコーマレックはノスタルジックな魅力と共に生き生きと描写し、ポルトを繊細でシャイな警察官として時にユーモラスに時に果敢に描いてみせるのだ。

結末は相変わらず暗い。また今回は結末が直接身体障害者へのあからさまな差別や憎悪と繋がっているので、やりきれなさ度は前回よりも高いと思う。(それでいてポルトを取り巻く人々の雰囲気が前作より明るいために、作品全体は暗くなっていないのだが。)いずれにせよ、推理小説という形ではあれそういった難しいテーマを扱った著者の試みはもっと高く評価されて然るべきではないかという気がした。

アマゾン.jp へ: Blumen für Polt / アマゾン.de へ: Blumen für Polt

原題: Blumen für Polt
著者: Alfred Komarek (アルフレッド・コーマレック)
出版年: 2000

HOME > 書評目次 > ポルトに花束を ‖ 読書の記録
────────────────
(C) Hana 2003 ウィーン今昔物語