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天国、地獄とポルト

ポルトシリーズの3作目。タイトルが少しおどろおどろしい(?)割には、相変わらずののんびりぶりである。

ウィーンからブルンドルフに有名な美食家でワイン批評家のハインツ・ハーフナーがやって来た。この都会人、飄々としていて掴みどころがない上、ポルトの友人のワインを散々にけなした為に一部の人々からは蛇蝎のように嫌われてしまった。それを憂いた町の神父は、仲直りのための昼食会を催す。しかしそこで、神父の料理人アマリー・プローストラーがハーフナーの顔を見た途端に彼女の顔色は変わり、その場から逃げ出してしまう。昼食会はおじゃんになり、その日の午後には彼女が神父の秘蔵ワインを飲んで死んでいるのが発見される。ワインには毒が入っていたようなのだ。
一連の経過に関わっていたポルトはアマリー事件の担当を任され、いつもながらの一見回りくどい捜査を開始する……。

シリーズ3作目なのに、ブルンドルフにもポルトにも全くマンネリの気配が見られない。私の見るところ、その秘密は登場人物の多彩さにある。1作目から毎回登場するレギュラー陣は何人かいるが(ポルトの上司、恋人、ワイン友達、雑貨屋の意地悪おばさんなど)、その他にも個性的なゲストが入れ替わり出てくるのだ。前作ではガキ大将のクラウスなどがそうだったが、今回一番異色だったのは上記の美食家ハーフナー。この人一見嫌味で傲慢なウィーン人なのだが、面白味があってなぜか憎めない。ぱっと現れ、ぱっと消え、去り際のセリフがいつも「アデュー」。ポルトはそんなハーフナー氏に戸惑うのだが、2人のちぐはぐな様子がまた何だかおかしい。

今回のキーセンテンスは「事件の影に男あり」。捜査が進むにつれて毒殺されたアマリーの知られざる男性遍歴がぼろぼろと明らかになり、その中にはポルトの友人知人が何人も含まれているものだから、純情なポルトは結構驚く。どうも怪しいのはハーフナー氏だけではなさそうなのである。どうやら、この一見静かな田舎町にもドロドロとした四角、五角、六角……関係が潜んでいたようなのだ。おまけにアマリーを料理人として雇っていた神父の動向も少しおかしい。
相変わらずあちこちでワインを飲んでおしゃべりをし、愛(自転)車であたりを走り回りながらポルトは手がかりを集めていき、遂に真犯人を見つけるが……。

犯人はかなり意外な人物である。
が、それは置いておいて、ポルトは今回自分のワイン醸造所を買う。醸造所と言っても大袈裟なものではない。ワイン町ブルンドルフには小さなワインケラーがいくつも並んでおり、そこでみんな自家製のワインを作っているのだ。そういう小さな古ぼけたワインケラーを手に入れたポルトは一国一城の主になったかのように喜び、読んでいるこちらも嬉しくなってきてしまった。次回私はポルトワイン醸造の瞬間に立ち会うことができるのだろうか、それが目下一番の疑問であったりする。

しかしこれまで3作連続で春から秋にかけての季節の事件が語られてきたので、ここらで一度くらい冬景色のブルンドルフの様子も読んでみたいとも思う。ワインの産地が舞台だと冬では話を作りにくいのか?次作『ポルトの夕べ』はもうとっくに発売されているので、早いとこ読んでみなくてはならぬ。

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原題: Himmel, Polt und Hölle
著者: Alfred Komarek (アルフレッド・コーマレック)
出版年: 2001

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