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三老婦人の茶会

英語圏に比べてはるかに遅れていたドイツ語圏推理小説の地位を一気に引き上げ、ひとつのジャンルとして確立させたのがこのグラウザーである(1896−1938)。
グラウザーは早くに母を亡くしたこともあってか、少年時代から問題の多いアウトサイダーであった。そのうち放蕩生活を始めたグラウザーに父親は愛想を尽かし、1918年にグラウザーは禁治産宣告を受ける。だがその後もグラウザーの生活態度は改まらず、それどころか肺結核を患った際に服薬したモルヒネのおかげで中毒になってしまう。以来グラウザーはモルヒネ中毒状態と精神病院への入院と自殺未遂とを何度か繰り返す。
だが将来を共にしたいと願う女性に知り合ったことを契機に、少しずつグラウザーは変わっていく。モルヒネへの耽溺や止まないものの、小説を書き始め、1934年には初の長編推理小説『三老婦人の茶会』を書き上げる。結局その恋人とは後に別れてしまい、この作品を本にしようという出版社を見つけることもできなかったが、以後彼の名声は次第に高まり、原稿や講演依頼も増えていき、グラウザーは人気作家への道を歩み始める。そして1938年、別の女性と結婚しようという日の前夜にグラウザーは倒れ、41歳という若さで突然の死を迎える。
グラウザーは作家生命が短かったため、それほど多くの作品を残したわけではない。それでも彼の業績は高く評価され、推理小説を対象にしたグラウザー賞は現在ドイツ語圏で最も栄誉ある賞のひとつに数えられている。

本書はグラウザーの死後、1940年に初めて出版された作品である。これを書いた時のグラウザーは金に困り、ドイツ語圏で低い評価を受けてはいるものの売れ筋の推理小説を自分でも初めて書いてみたところであった。

小説の舞台はジュネーブで、ある夜若い男性が薬殺される。その数日後、やはりいかがわしい薬局を営んでいた男が同じような手口で殺され、この2人の被害者を繋ぐ線上に1人の高名な心理学教授の名が現れる。ジュネーブの警察と協力して捜査を進めることになったアイルランド人のジャーナリスト、オキー (O'Key) は、かの教授以外にも被害者たちのかげに潜む秘密に少しずつ近づいていき……。

何というか、推理小説以外にもオカルト、スパイ、恋愛、政治……などなど様々な要素が盛りだくさんで、話としてはあまりまとまっていない。登場人物も多過ぎ、欲張り過ぎてはちきれてしまった小説のような様相を呈している作品である。これじゃグラウザーが出版社を見つけられなかったのも無理はないかもしれない。
本の解説を読む限りでは、グラウザーは現実と仮想のジュネーブを上手に作品の中に織り込み、さらに自身の体験(モルヒネ中毒、精神病棟への入院等)をも描くことで、独特の世界を創造したようであるが、私にはあまり(と言うか、正直全く)ピンと来なかった。ただこれは習作として理解してがっかりせず、以後の作品に期待をかけることにしようと思う。次はシュトゥーダー刑事シリーズの第1作を読んでみるつもりである。

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原題: Der Tee der drei alten Damen
著者: Friedrich Glauser (フリードリッヒ・グラウザー)
出版年: 1940

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