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ミニー・マン

『ミニ・マン(小さい男)』ではない、『ミニー・マン』である。マンはトーマス・マンのマンと同じ、つまり苗字で、ミニーは女性名ヘルミーネの略称である。
これを読んでなんだかヴォルフ・ハースの『きたれ、甘き死よ』を思い出してしまった。文章の独特なスタイルがどことなく似ているような。しかし『きたれ、甘き死よ』のブレンナーが元私立探偵であったのに対し、『ミニー・マン』の主人公は22歳の赤毛のアル中現役私立探偵でおまけに女であったりする。しかも身長が1m20cmに満たないチビで、右足が多少短いために松葉杖なしには歩けない障害も持っているのだ。……かなり特殊な設定である。

しかし最初から何だかユーモラスなにおいがぷんぷん漂ってくる。はじめの『この本の決まり』と書かれたページには、『ミニー・マン』を読むにあたっての規則(?)が13条まで書かれている。面白いのを抜き書きしてみると……

こうやって始まる『ミニー・マン』だが、肝心の推理小説としての筋はかなり単純だ。

ある日ミニーは知り合いの泥棒から相談を受ける。ある男に脅されてその男の屋敷に空き巣に入ったのはいいが、男の妻を殺した濡れ衣を着せられて困っているというのだ。それから同じ日に、ある検察官から自分に脅迫状を送ってくる犯人をつきとめてほしいとの依頼も受ける。助手のジョーイをこき使い、ミニーは捜査を開始する。

……泥棒をはめた犯人は、空き巣を依頼した男だと最初からわかっているのである。検察官を脅している相手を見つけるのは多少厄介だったが、それも比較的あっさりかたがつく。その過程が面白いと言えば面白いのだが、ミニーが妙に自虐的なムードに陥ったり感傷的な詩が出てきたり、また突然愉快な描写に切り替わったり、小説の雰囲気が一定していないので、読んでいてその起伏の差についていけないことが何度があった。
もう少しユーモア探偵小説として一定した雰囲気の本だったらよかったのに……。一冊の本の中にとてつもなく楽しい部分と、「何だコリャ?」というどよんとした退屈さがあり、それをどう評価したものなのか悩んでしまう。

このミニー・マンシリーズは全部で4作書かれ、そのうちの最終作だけが日本語に訳されている(『マン嬢は死にました。彼女からよろしくとのこと』/ 上松美和子 訳 / 水声社)。しかしツェンカーは何度も映像化されたコタンシリーズで有名な作家なので、なぜよりによってこれだけが日本語訳されたのか少し不思議でもある。

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原題: Minni Mann
著者: Helmut Zenker (ヘルムート・ツェンカー)
出版年: 1989

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