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苦難の海

ドナ・レオンによるブルネッティ警部の推理小説シリーズ10作目がこの『苦難の海』である。先日ブルネッティ警部デビュー作の『死のフェニーチェ劇場』を読んだばかりでなぜ10作目に飛んでしまうかと言うと、これは本を貸してくれた人がシリーズ作を飛び飛びに購入してたからである。
それでも話はちゃんと理解できるので問題はなかったのであるが、中盤までは相変わらずのったりのんびり何の進展もない。またもや何度も途中で読むのを止めようかと思うほど退屈であった。

『苦難の海』の筋は、ヴェネチア近くのペレストリーナという細長い島で漁師の親子(父と息子)が殺されるところから始まる。そこでヴェネチアからブルネッティ警部が呼ばれて捜査を開始するのだが、半島の住民たちの仲間意識が強く口が固いため、捜査は難航する……というものである。
私が読んでいない2〜9作がどういう内容なのかは知らないが、10作目は1作目より随分レベルが落ちてしまった感がある。今回は、生前の被害者の様子やその人間関係やらがほとんど明らかにされないまま話が展開していって犯人がわかってしまうので、推理小説とは言えないような出来上がりになっているような。何と言ったらいいのか、犯人候補の目鼻がつく前に犯人が判明してしまうような展開なのである。ストーリーの弱さを補うかのように、最後はウワ〜ンと盛り上がって終わるのだが、そういう誤魔化しはいかんだろう。

私がよく参考にしている世界の推理小説書評サイト Krimi Couch (ドイツ語のみ)はこの『苦難の海』を酷評している(「ブルネッティシリーズの最低作」、「本作品でブルネッティは時々年金生活のことを考えているが、こんなレベルが続くなら著者は警部を本当に退職させたほうがいいかもしれない」等々)。 書評を読んでいる限りでは次作はまた少し持ち直すらしいが、もうドナ・レオンは十分。ブルネッティ警部のキャラクターに惚れ込んでいる人ならシリーズも楽しく読めると思うのだが、私にはその面白さがよくわからない。一言で言って地味で暗過ぎるのだ。日本語に最初の2作しか訳されていない理由もそこらへんにあるのかもしれない。

アマゾン.jp へ: A Sea of Troubles

原題: A Sea of Troubles
著者: Donna Leon (ドナ・レオン)
出版年: 2002

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