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死体に歯あり

法歯学の本。法歯学というのは、身元不明の死体を歯で確認する時に役に立つものらしい。その法歯学の第一人者が書いた本がこれなのであるが、文章が下手なので非常に読みにくい。私にこの本を貸してくれた人も「内容は面白いけれど、文を書くのが苦手な人みたい」と言っていたが、本当にその通りだった。特に

あたりが問題だった。

そもそも学者が素人向けに書く本は、その専門の内容がわかりやすい形でかつ興味をそそるように書いてないといけないと思うが、この本はその点でも失格。法歯学の内容は噛み砕かれて書かれているものの、さらに話が法歯学と全然関係のない筆者の人生的な持論や哲学に飛ぶので、時々法歯学の本を読んでいるというよりはある学者の個人的な説教エッセイを読んでいる気にさせられた。
読者にとっては本の内容が面白ければ、本を書いた人間の人格や道徳観や生活態度なんて関係ないのである。それがどうもこの著者にはわかっていないような……。

日航機墜落事故での死体確認作業のくだりはそれなりに読めた。が、当然ながらその時著者が自分の研究室の学生にどんな説教を垂れたのか、奉仕の精神を説いたのか、という内容もセットでついてくる。多分この方は倫理や社会福祉の精神について、法歯学と同じくらいたくさん書きたいのだ。別にそれは悪いことでないのだが、どうせなら法歯学と道徳と、それぞれのテーマで2冊の本を書いていただけるとありがたかった。

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原題: 死体に歯あり
著者: 鈴木 和男
出版年: 1992

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