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パーフェクト・ブルー

これは宮部みゆきの作品の中で私が初めて読んだものなのだが、正直期待はずれでがっかりした。

元警察犬シェパードのマサが一人称で語る推理小説は斬新かもしれないが、目新しいのはそれだけ。マサ自身をはじめ、周囲の人間があまりに平凡で大人しいのだ。もっとアクがないとつまらんよ。
落ちこぼれだが賢く明るい少年という設定で描かれている諸岡進也にしても明る過ぎ。それが、難しい家庭に育っても明るくいい子だというアピールなのかもしれないが、翳がなさ過ぎて逆に薄っぺらくなっている。この諸岡進也に性格の陰影というものを書き加えていたら、小説そのものももう少し面白くなったのではと思うが。 また登場人物の心情や状況にも適当にふれるだけ。それをちゃんと掘り下げないまま話が終わっているので、読後感は中途半端の一言に尽きる。

ストーリーにも緊張感がない。
多分構成がよくないのだと思う。事件の背景は面白いのだが、ひとつひとつの要素がうまく絡み合っていない。それを無理矢理にも繋ぎ合わせながら話を進めていって、最後はドンデン返し。話が雑なので、最後もフーンで終わってしまって何の感銘も受けない。

警察犬をわざわざ主人公に据えた意味もよくわからない。マサが本当に活躍したのは最後の乱闘シーンだけだし、マサがいなくても事件は解決できたんじゃないの? それから犬がいくら賢くても、車の上にこっそり乗って屋根にしがみついて悪者を尾行するとか、夜の対向車のフロントガラスにぶら下がっているコアラのマスコットを見分けるとか(犬は近眼)、無理だろう。話に勢いがあれば、そういう小さな引っ掛かりなんて気にならないが、『パーフェクト・ブルー』に関しては作品そのものに満足できなかったため、細かく突っ込みを入れたい気分になてってしまう。
ただこの作品が宮部みゆきのデビュー作だったらしいので、あんまりキチキチ小言を言ってもアレかも。後で傑作が続々登場するらしいので、そちらに期待しましょう。

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原題: パーフェクト・ブルー
著者: 宮部 みゆき
出版年: 1989

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