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文明の衝突と21世紀の日本

私はそれほど政治や国際情勢に興味がないので、そういった方面の情報に関しては毎日新聞に目を通すだけで満足して、わざわざ本までは読んだりしない。しかしこの本に関しては帯に「多文明世界で、日本は孤立する!」と仰々しく書いてあるので、こりゃ大変だと本を読み始めてみた次第。

この本によると、世界中にいくつもの文明世界が平行して存在しているらしい。文明世界とは同じ宗教や人種、歴史、習慣などが基礎として(大抵は)複数の国々から成り立っているブロックのことで、現在七つか八つ(中国、日本、インド、イスラム、西欧、東方正教会、ラテンアメリカ+アフリカ)の文明があるとされている。要はその中で日本は同じ文明に属する国を持たないので孤立しやすい傾向にあるよ、ということである。

と思いながら別の人の書評を読んでいたら、次のような文章に突き当たった。

著者はドイツとフランスの和解の例をあげて、日本と中国がいかにして和解できるかが、東アジアの将来の平和と幸福を定めるとして議論を締めくくっている。この背後には、アメリカと中国の対立が今後も続くという信念がある(まさに「文明の衝突」)。これは仮に中国の共産主義体制が崩壊したとしてもそうなるということだ。しかし、著者の定義上、中国と日本は違う文明に属しているんだから、ドイツとフランスの例はちょっと違うはずだ。このあたりに、著者が日本文明なるものを想定しておきながら、それが遠からぬ将来に消え去る運命にあると予想している本音が透けて見える。まさか日本での講演でそんなこと言うわけにいかないだろうけど、そう思っているに違いない。
wad's 読書メモ文明の衝突と21世紀の日本より)

……結局はそういうことなのかも。帯の文句が扇情的に過ぎると思っていた私だが、どうやら読みが浅かったようだ。
まぁ多少難しそうな題ではあるが、訳文が自然な日本語なので非常に理解しやすく、内容もかなり噛み砕いて書いてあるので、政治オンチの人にも薦められる本である。

ただひとつだけ疑問がある。現在アラブ世界が元気あり過ぎる理由として、ハンチントンはイスラム諸国に中核国家が存在しないことと、出生率の高さに因る若年人口(15〜24歳)の増加を挙げている。

歴史的に見ても、この世代の若者が人口の二〇パーセント以上を占めると社会は不安定になり、暴力や紛争がエスカレートする傾向がある。ほとんどのイスラム国家では、若年人口が激増し、総人口の二〇パーセントに到達しつつある。
これがイスラムの好戦性を生み出し、イスラム教徒移民の増加と、イスラム社会の急激な成長による隣国への圧力の元となっているのである。
(30〜31ページより引用)

この世代が年を取っていけば、イスラム世界も落ち着くだろうというのがハンチントンの見方なのだが、またそこから子供が生まれてしまったらどうなるのかね?

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原題: 文明の衝突と21世紀の日本
著者: Samuel P. Huntington (サミュエル・ハンチントン)
翻訳者: 鈴木 主税
出版社: 集英社
出版年: 2000

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