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神秘的なウィーンの森

ウィーンをぐるりと囲むウィーンの森の伝説や怪異談、事件などについて年代順にまとめた本。青を基調とした幻想的な写真の表紙に惹かれて買ってみた。

だがその表紙とは打って変わって、本の内容はかなりおどろおどろしい。まず一話目の題は『モドリンクの納骨堂』。1884年にこの納骨堂に接する教会修復工事の際、大量の人骨が地下から発見されたことから話が始まる。
これらの人骨は1683年にウィーンまで侵攻して来たトルコ人に虐殺された住民のものだということが判明する。その人骨を2クラフター(3.8m)ほど取り除けていくと、さらに古い共同墓地が見つかった。これは13世紀に攻めて来たマジャール人に殺された人間の骨で、それを1.5クラフタ−(2.85m)ほど掘っていくと、今度はもっと古い、明らかに聖職者のものだと思われる墓所が現れた。
著者はこれがテンプル騎士団の墓所だったと推論する。そこから、一度は栄華を極めたこの騎士団の急速な没落とそれに対する当時のオーストリア公の関係、さらには教会の聖像や設計からテンペル騎士団との関連性を指摘し、興味深い歴史の断面を読者に垣間見せてくれる。

と、こんな調子で全部書かれていたらよかったのだが、一番よく書けているのは実はこの一章だけ。あとは残酷な領主伝説を脚色したり、ウィーンに侵攻したトルコ軍の残虐非道ぶりを詳述したり、ウィーンの森で起こった連続殺人事件や猟奇殺人事件の経過を何のひねりも工夫もなく書き連ねたりしてあるだけなので、読んでいて辛い。
それなら『神秘的なウィーンの森』という題よりも『ウィーンの森/血生臭いエピソード集』とでもしたほうがよかったと思う。そのほうが読者も本の内容を類推しやすくなる。著者のカルフハウザーはこの本の他にも『不可思議なウィーンの森』、『不可思議なウィーンの森:太古の人間の痕跡を追って』という似たような本を書いているそうだが、果たして読み応えのある面白い本なのやら。

とにかくこのたびは、人間だけでなく本も外見だけで判断してはいかんという教訓にはなった。ただ、表紙だけでなく本に挿入されている写真のうち、いくつかは非常に美しいので、本をペラペラめくってみるだけの価値はある。

アマゾン.de へ: Mystischer Wienerwald

原題: Mystischer Wienerwald
著者: Wolfgang Kalchhauser (ヴォルフガンク・カルフハウザー/文)
         Robert Bouchal (ロベルト・ボウカル/写真)
出版年:1999

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(C) Hana 2003 ウィーン今昔物語