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オリバー・ツイスト

オリヴァーなのかオリバーなのか、オリヴァなのか。取り敢えずグーグルで検索してみると「オリバー・ツイスト」のヒット件数が一番多かったので、それに倣ってここでも「オリバー・ツイスト」としておく。

ずっと前から一度は読んでみたいと思っていた文豪ディケンズの名作だったので、ワクワクしながらページを繰っていった。この小説についての前知識はあまりなかったが、何となく貧乏少年冒険活劇物語、19世紀のロンドンを背景にトム・ソーヤーとハリー・ポッターを足して2で割ったような内容でないかと思っていたのだが、それが全く違っていた。

本の題にもなっている主人公のオリバー・ツイストは孤児院でひもじい思いをしながら育ち、ある棺桶職人のところに徒弟に出される。そこでも色々酷い目に遭い、たまらなくなったオリバーはロンドンに向けて家出する。だが着の身着のままで出奔したオリバーは途中で飢え死にしそうになり、そこをある盗人グループに拾われる。しかし仲間がスリに勤しんでいる途中でオリバーだけ捕まってしまい……。

と、こう書くと活劇っぽいのだが、そういったスリルや緊張感とはあまり縁のない小説だった。第一に、主人公オリバーが退屈でつまらない男の子なのである。清い心の正直な少年なのだが、覇気に欠けているし、自主心・独立心もゼロ。周囲に流されるままで、何か大事に至るとすぐに泣き、気絶して病気になる。「男の子が泣くなんて……」などと時代錯誤なことを言うつもりはないが、とにかく弱々しくて孤児院育ちとは思えないほど頼りなくて、読者が共感しにくい主人公であった。(それから、食事もロクロク与えないような孤児院の子供たちに読み書きを習う機会があるのだろうか? オリバーは本が読める設定になっているのだが、それもちょっと嘘っぽい。)
またこのオリバーの出番が主人公のくせに少ない。特に後半はオリバーをめぐって善人対悪人の戦争(?)に突入してしまい、肝心のオリバーは蚊帳の外であった。それならそれで、別の題をつけたらいいのに。『オリバー・ツイスト』なんてあるから、私は変に期待してしまってがっかりした。

ただ、当時のイギリス社会の風刺として読むと中々面白い。特に一部の中・上流階級の人間の冷酷さ、狡さ、残酷さは生々しく描かれている。悪人もまぁそれなりには個性的だったような。ただ、善人のほうは普通の「いい人たち」ばかりである。善と悪がきれいに別れていてわかりやすいのはいいが、それだけに物語のほうが平板になってしまっている。例外はオリバーを最初に拾ってくれるブラウンロウ氏の友人、グリムウィッグ氏。この人は偏狭な変人で、物語に多少のアクセントを付与してくれていた。

私の語学力が足りないからだと言われればそれまでかもしれないが、本書はどこがどう名作なのかよくわからない「名作」だった。英語の勉強にはなったが、収穫はそれだけ。読み続けるのも辛かった。
[2004/04/30]

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原題: Oliver Twist
著者: Charles Dickens (ディケンズ)
出版年: 1837-1839
日本語版
翻訳者: 小池 滋 (オリヴァー・トゥイスト)
出版社: 筑摩書房
または
翻訳者: 本多 季子 (オリヴァ・ツウィスト)
出版社: 岩波書店
または
翻訳者: 朱牟田 夏雄 (オリヴァ・トウィスト物語―他1篇)
出版社: 研究社出版

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