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私訳 クランバンブリ後書き

 私は『クランバンブリ』をあるORF(オーストリア国営放送)のドラマで初めて知りました。「エーブナー=エッシェンバッハの短編を見事にドラマ化し……」などというドラマの前宣伝が気になって、見てみたわけです。元々犬好きの私は、ドラマの最後に案の定号泣しました。(ドラマ自体はあまり辻褄の合わない恋愛シーンなどあって、それほど面白いものでもなかったのですけどね。)その後原作にあたってみたわけです。
 ドラマでは密猟者の「黄色」が主人公でしたが、原作では犬を引き取るほうのホップの視点から描かれていて意外でした。またこれは文庫でたったの12ページという掌編であるために非常に簡潔な話となっており、それなのに心をえぐるような力強い描写が印象的でした。それで一度翻訳というものをやってみたかったこともあり、本の版権もとっくに切れていることもあり(原作者のエーブナー=エッシェンバッハは1916年に亡くなっています)、話がごくごく短いこともあり、この話を訳してインターネット上で発表してみることにしました。

 ただ、やはり翻訳という作業は簡単なものではありませんでした。特に最後の段落の訳には苦労しました。ホップの最後の言葉は直訳すると「惜しいことをした (Schad um den Hund !) 」となるのですが、日本語を訳しながらどうも「惜しい」「残念」「可哀想」というセリフが合わないような気がして結局「なんという犬だ」という意訳をしてしまいました。翻訳をしていてどこまで原作の意味から外れていいのか、難しいところです。
 それから、ホップのライバルの「黄色」。これは原作でもそのまま「黄色 (der Gelbe) 」なのですが、日本語で単純に「黄色」としてしまっていいのかも悩みました。日本語では誰かを色の名前そのままのあだ名で呼ぶことはあまりないと思ったので。黄色ならその色を連想させる「バナナ」や「ひよこ」、「たんぽぽ」などというニックネームがつくほうが自然ではないですか? しかしこの場合は文脈に合った「黄色」の代替語を思いつけなかったので、そのまま「黄色」にしておきました。他の翻訳者(私の前に2人の方がこの作品を訳されているようです)の方々がこの「黄色」をどう訳したのかも気になりましたが、日本にいないのでそちらをあたることはできませんでした。

 私の訳では日本語として不自然な部分がいくつもあり、本当はもっと文章を推敲するべきなのかもしれないと自分でも思うのですが、このへんで諦めて取り敢えずアップすることにしてみます。そしてもっといい表現を思いついたり、間違いを見つけた時はその都度訂正していこうと思います。(これがインターネットの便利な点ですね。)
 またドイツ語の原作は Projekt Gutenberg-DEこのページで読むことができます。私自身もこの作品について感想を書いたことがありますので、興味のある方はそちらのページもどうぞ。そこでは著者のエーブナ―=エッシェンバッハについても少し書いてあります。

 それから明らかな誤訳・珍訳、誤字脱字などがありましたら、御教示いただけるととてもありがたいです。また欲張りなようですが、感想なども教えていただけると幸いです。(メールアドレスは hana_wien@hotmail.com です。)

 本当はクランバンブリよりもっと悲惨な(と私には感じられた)話『シュピッツィン』(やはりエーブナー=エッシェンバッハ作)も訳してみたいのですが、そこまでの時間と根気が私にあるのかどうかわかりません。でもやってみたい、そんな感じです。[2004/01/28 / 2004/10/30 改]

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(C) Hana 2004 ウィーン今昔物語