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ドイツ語の辞書について

私は何種類か辞書を使っていますので、何かの参考になればとそれらをここに紹介しておきます。

独和辞典
独独辞典
外国語辞典
語源辞典
オーストリアのドイツ語辞典
慣用句辞典
文法書
その他

独和辞典

初心者時代には何か忘れましたが、内容が色分けされた初心者向けの辞書を使っていたように思えます。だんだんそれが物足りなくなってきたので、2〜3年後郁文堂の独和辞典(見出し語11万語)に乗り換えました。その後、さらに補足用に小学館の独和大辞典(16万語)を買い足しました。どちらの辞書も10年くらい使用し、特に使用頻度の高い郁文堂の辞書はボロボロになっていますが、今でも現役です。本当は両辞典とも買い換えたいのですが、多分新版は新正書法にのっとった辞書になっているでしょうから、未だに旧正書法にかじりついている私は仕方なくボロボロの辞典を使い続けています。

私自身は大抵、郁文堂の辞書を普段用(コンパクトなので単語を調べやすいため)、小学館のものを詳しく調べたい時用と、使い分けています。各辞書の収録語数以外の大きな違いは、小学館の大独和辞典において、特に歴史用語などの説明が詳細で丁寧(なことが多い)ということでしょう。
例えば(歴史用語ではありませんが) Allegorie の項を比較してみますと

アレゴリー、寓意、諷喩

としか郁文堂の独和辞典には載っていませんが、小学館独和大辞典には

風喩(ふうゆ)、寓喩(ぐうゆ)、比喩、寓意、アレゴリー(抽象的な観念を具象的なものによって比喩的に表現するもの) : et.4 druch eine 〜 veranschaulichen …をアレゴリーによって(具象的に)明らかにする)

と比較的わかりやすく説明されています。
このように、ある単語を日本語に置き換えられただけではちっとも意味がわからない時、独和大辞典が大活躍してくれることが何度もありました。そんなわけで、私にとって郁文堂の独和辞典はレギュラーで、大辞典のほうは頼り甲斐のあるピンチヒッターというような存在でもあります。

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独独辞典

こちらに来て、私はまず外国人用の独独辞典、Langenscheidt社の Langenscheidts Großwörterbuch / Deutsch als Fremdsprache(6.6万語)を買いましたが、これはあまり役に立たず、すぐにお役御免になりました。中〜上級者であれば、こんな辞書は買う必要がないと思います。それよりもっと大きい普通の(ドイツ語を母国語とする人用の)独独辞典を買ったほうが後々余程役に立ちます。
その後私が買った独独辞典が Duden の Deutsches Universalwörterbuch(14万語)です。これは見出し語の数では独和大辞典に劣るものの、新しい単語や言い回しを積極的に取り入れているので、新聞などを読む際に独和大辞典にも載っていない比較的新しい単語を調べられて重宝しています。例:Persilschein, Generikum 等々。(ただこういった単語は私の持つ古い独和辞典に載っていないだけで、新版には収録されているのかもしれません。)また語源についても私が使用している両独和辞典より詳しく解説してくれていますので、それなりに役に立ちます。

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この Universalwörterbuch とよく引き合いに出されるのが Wahrig 社や Bertelmann 社の独独辞典です。しかし両社の辞書は一見見出し語が多いように見えて、その実単語の説明が端折ってあったり、地方色の濃い単語だと省略が多いという使い勝手の悪さがあるので、私は好きではありません。Wahrig と Duden の辞書を比較した調査でも、A から Abitte まで前者は69語、後者は95語の単語を載せているという結果が出ているようです(※)。
それから同じく独独辞典ですが、物を書く上では類義語辞典というものも非常に重宝します。私が使用しているのは Deutscher Taschenbuch Verlag という出版社から出ている Wörterbuch Synonyme (3万語)で、見出し語の数は少ないですが、中々使い易くていい辞書だと思います。類義語辞典は他のものを使ったことがないので、比較ができないのですが。

アマゾン.de へ: Wörterbuch Synonyme

Warum der Duden und das Österreichische Wörterbuch nützlicher sind / von Wolfgang Sauer (Presse) / 30.12.2002

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外国語辞典

少し話はそれるのですが、私はオーストリア版のクイズ番組ミリオネアが大好きで毎回欠かさず見ています。そこでよく小難しい外国語が問題として出題されたりするのですが、それが上記の Duden Deutsches Universalwörterbuch にも載っていなかったりします。それが何となく悔しいので(別にそれだけが理由ではありませんが)、同じく Duden のドイツ語における外国語大辞典、Das große Fremdwörterbuch (8.5万語) を購入しました。この辞書は特に、使用頻度の低いラテン語やフランス語源の単語を調べる時にその力を発揮してくれます。また巻末に数は少ないですが、ドイツ語を外国語に直した類義語をアルファベット順に記載してありますので(例:wechselseitig / korrelativ, mutual, reziprok)、少しカッコつけた言い回しを探したい時や同じ単語の使いまわしを避けたい時にはこれが役に立ったりもします。

アマゾン.jp へ: Das große Fremdwörterbuch / アマゾン.de へ: Das große Fremdwörterbuch

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語源辞典

それから、あまり使いませんが、語源辞典としては Walter de Gruyter 社の Kluge を1冊持っています。語源辞典も大きなものになると、何巻も長さになりますが一巻だけの語源辞典でしたら Kluge が一番使い易いような気がします(1.3万語)。私が持っているものはゼーボルト (Seebold) の編纂した24版ですが、彼は単語の成立と変化そのものだけに注目し、それ以外に単語や意味の変化に影響を与える社会的・環境的因子についてあまり言及しないため、批判されているようでもあります。そのため、単語に対する外部からの影響を概説してくれていたミツカ (Mitzka) の Kluge 版(17〜21版)を惜しむ声も聞かれます。

その他使い勝手がよかったものとして、 Akademie-Verlag 社から出ている Wilhelm Braun の編纂による語源辞典があります。これは全3巻から成っていて、21,000語ほど収録されています。この辞典の特色は、外国語からの借用語や日常語 (Umgangssprache) まで比較的カバーされている範囲が広く、また上記の Kluge の辞書より詳細な説明がなされているので、突っ込んで調べたい人にはこちらの辞書のほうが向いているでしょうと思います。

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オーストリアのドイツ語辞典

その他、オーストリアのドイツ語について調べたい時には、Das Österreichische Wörterbuch (7.7万語) とDuden の Wie sagt man in Österreich? (7千語) を見れば大抵の単語は載っていることでしょう。前者は「学校、官公庁で使われるオーストリアの正しいドイツ語」を、後者は主にオーストリアでのみ使用される単語を中心に編纂されています。
それ以外にもウィーン語辞典、オーストリア方言辞典などは数多くありますが、標準的なオーストリアのドイツ語単語について調べたい場合には、この2冊があれば十分だろうと思います。
ただ、ドイツ語の標準語や文語 (Schriftsprache) においてオーストリア独特の語彙が占める割合はわずか2%とも4%とも言われています(※)。ですから本を読んだり、ニュースを見聞きする上で、オーストリア独自のドイツ語を知らないために内容理解に困るということはあまりないだろうと思われます。また上で紹介した2冊の独和辞典や Duden の Universalwörterbuch なども標準語におけるオーストリアの語彙をかなり載せているので、余程オーストリアのドイツ語に興味を持っている人以外は、わざわざこういった辞書を購入する必要はないだろうと思います。

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※ Pohl, Heinz Dieter: “Zum österreichischen Deutsch im Lichte der Sprachkontaktforschung”, In: Klagenfurter Beiträge zur Sprachwissenschaft 25, 93-115, 1999.

2004年1月19日付けのプレッセで読みましたが(※)、今年の秋に Walter de Gruyter 社から新しい辞書が出るそうです。この中ではオーストリア、ドイツ、スイスの同義語が(さらには南ドイツ、バイエルン、北ドイツ……等の地域色の濃い語彙も)並列して収録されているそうで、これはドイツ語の多様性 (Plurizentrität der deutschen Sprache) を意識して作られた初めての辞書だろうと思います。これまで出版されてきた辞書類はどれもいずれかのバリエーションのドイツ語(オーストリアの、北ドイツの、スイスのドイツ語……)を中心に編纂してありましたから。
見出し語は約1.2万語と少なめですが、例えば Hendel (Ö), Hähnchen (D), Broiler (neue Bundesländer), Poulet (CH) というふうに比較できるそうで、非常に画期的です。ただこれも方言辞典ではなく、各地方または各国の標準ドイツ語のバリエーションを収録してある辞書です。そこのところをお間違えのないように。

※ Kummer, Susanne: “Das Deutsch gibt es nicht”, 19.01.2004, Presse.

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慣用句辞典

慣用句や決り文句などを調べたい時に使っているのが、Herder社の Lexikon der sprichwörtelichen Redensarten で、ここには1.5万種ほどの単語の言い回しが収録されています。数的に見ると少ないように見えますが、これはペーパーバックで5巻(約2千ページ)もあり、千枚以上の挿絵や写真も載せられています。またひとつの単語について詳細な解説(象徴としての意味合い、語源、単語や意味の変化など)と共に様々な慣用句が紹介されているので、読み物としても面白く読めます。

アマゾン.de へ: Lexikon der sprichwörtelichen Redensarten

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文法書

基本的な文法事項を習った後は、私は長いこと初心者用の教科書しか使っていませんでした。それでわからない場合は、上記の独和辞典を調べれば大抵の問題は解決しましたし。ですが、最近になってちゃんとした文法書も1冊くらい必要かもしれないと考えて、適当なものを買いました。それが Duden から出ている Das Standardwerk zur deutschen Sprache という12巻シリーズの第4巻、 Grammatik der deutschen Gegenwartssprache というものです。
当然ながら全てドイツ語で書かれています。それがまたわかりにくいドイツ語で、黙読しただけでは意味が通じないことがよくわかります。仕方ないので私は2、3回音読したりしていますが。その代わり、いったん内容を理解すると不明だった点がストンと明らかになるので、カタルシスを得られたような気分にもなれます。例を挙げてみると……

Das Plusquamperfekt
Das Plusquamperfekt unterscheidet sich vom Perfekt dadurch, dass es den Vollzug oder Abschluss eines Geschehens als gegebene Tatsache nicht für die Gegenwart oder für die Zukunft feststellt, sondern für einen Zeitpunkt der Vergangenheit: (...)
(153ページより)

これでは文の内容が抽象的過ぎてよくわかりません。しかしこの文章の後にトーマス・マンの作品からの引用が例文として続き、さらにそれがきちんと解説してあるので、根気よく理解しようと努めれば、そのうちパッと霧が晴れるようにわかる瞬間が来ると思います。おかげで私はドイツ語の過去完了形の用法について、本当に理解することができました。
ただ、細かい字でギッチリ書いてあり、内容を理解するのも骨が折れるので、「どうしても」という時以外は中々手に取る気がしない文法書でもあります。でも1冊あると心強い。

ドイツ語の文法書は山ほど出版されていますので、かえって「自分に合ったものを」とこだわってしまうと、特定の1冊をなかなか選べなくなってしまうかもしれません。しかし逆に考えると難易度の差こそあれ、内容はどれも同じようなもののはずなので、「最良の1冊」にこだわらず、店頭に並んでいる適当な1冊を買うのも悪くないと思ったりします。(実際私はそうやってこの Duden の文法書を買いましたし。)

アマゾン.jp へ:Duden Grammatik der deutschen Gegenwartssprache
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その他

ドイツ語への理解をより深められるる書としてお薦めしたいのが、Peter Braun による『現代ドイツ語の傾向』という本です。それぞれの文法事項から、ドイツ語の特色まで幅広いテーマを詳細に扱っているので、味気はないですが非常に勉強になります。
ただこれは小難しい文章の本で、寝転がって気軽に読める本ではないので、読了するのはそれなりに大変かもしれません。集中力が切れてくると、10回くらい同じ行を読み続けてしまったりする種類の本です。

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上記の『現代ドイツ語の傾向』よりかなり読み易いのが Hans Eggers による『20世紀のドイツ語』という本です。こちらは、『現代ドイツ語の傾向』よりずっとテーマが限られているので頭の中がゴチャゴチャにならずにすみますし、文章も単純で平易に書かれているので、内容を理解しやすいです。『現代ドイツ語の傾向』を補足する本として読んでみてもいいだろうと思います。

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[2004/07/22 改]

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(C) Hana 2003-2004 ウィーン今昔物語