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アルブレヒト・デューラー展感想

デューラー自画像 ウィーンで大盛況のデューラー展に私も行って来た(11/13)。込まない時間に行こうと、わざわざ平日の午前中を選んで出かけたというのに、人だらけであった。しかしこの日を逃したら一生あの有名なウサギちゃんを見ることはできないかもしれないので、気を取り直して芸術鑑賞開始。

ヨハネ黙示録の四騎士 アルブレヒト・デューラーはニュルンベルク出身の画家である (1471-1528)。金細工士の父を持ったデューラーは幼い頃から画術に慣れ親しみ、早いうちからその才能を開花させる。右の絵はそのデューラーが13歳の時に描いた自画像である。その後デューラーは繰り返し自画像を描くが、これがその最初のものであるらしい。
成人したデューラーは、何度もイタリアやオーストリア各地に旅行に出かけるのだが、そこで様々な芸術家の作品やイタリアルネッサンスなどに影響を受けて、自身の才能も大きく開花させていく。また当時の最新技術であった活版印刷術による本の挿絵をデューラーが描いたことで、彼の名声はさらに広まっていく。特に熱心なルター派でもあったデューラーは、聖書の様々な場面を緻密で躍動感溢れる版画に表現し、大きな反響を呼び起こした。左の木版画は、『黙示録の四騎士』の一部だが、右の弓を手にした騎士はデューラー自身であるとも言われている。さらにデューラーは1525年に『測定論』を著し、その中で幾何学の理論と実用について幅広く論じただけでなく、活字の定型デザインを作り出すことにも大きく寄与した(右図参照のこと)。
デューラーによる活字デザイン 多才なデューラーは、版画だけでなく油絵や水彩画でも素晴らしい絵を残している。その緻密さは絵の具を用いた絵においても遺憾なく発揮され、溜息の出るような細かい筆さばきが見事な絵画が今回の展覧会でもいくつも展示されていた。

しかし展覧会ではあまりに多くの絵が展示されていたので、主だった作品以外は既に私の頭の中から消え去ってしまったような気がする。それでも数少ない脳細胞を酷使しながら記憶を掘り起こしてみると、かの有名なウサギちゃんにはそれほどの感銘を受けなかった。もしかしたらあちこちの街角でそのポスターを目にし過ぎてどこか麻痺してしまったのかもしれない。むしろそのウサギちゃんの左隣に展示されていた『死んだブッポウソウ』と『ブッポウソウの羽根』の水彩画2枚の特に青の色の美しさと、細かい羽根の一本一本まで描いてある精緻な筆使いに目を奪われた。 死んだブッポウソウ
だが私の一番印象に残っているのは、デューラーの自画像デッサン。オーディオガイドの説明によると、これはこころもち前屈みになりながら鏡の中を覗きこんでいる姿をデューラーが自分で写し取ったのであろうということだったが、……これが裸のデッサンで下のほうまでバッチリ描かれているのである。普段他人様のそういうものを見慣れない私の視線は当然その下のほうに集中してしまい、それをマジマジと観察してしまった。「一部多少誇張してあるんでないか……?」という疑問が湧いてきたが、その点についてオーディオガイドは何もふれていなかったので、詳しいところは不明。多分本人しかその答えは知らないだろう。
……などと色々もの思いにふけっていたのだが、ふと気がつくとその裸デッサンの下のほうをまじまじと観察しているところを同行者に観察されていた。

サイ その他、数々の版画は本当に素晴らしかった。またデューラーは、実物を見ずとも、資料をよくよく観察してその動物の本質を掴んだ絵を描く才能にも恵まれていたようだ。本物のライオンを見たことがなかったデューラーだが、多少人間ぽい顔つきをした独特の獅子像を作品の中でいくつも描いているし、右のサイの版画もデューラーは本物を見ずに描き上げた。(これは今回のデューラー展では展示されなかったが、デューラーの代表的な作品である。ある画家のサイデッサンを元に、デューラーがこれを描き上げたそうだ。)

このデューラー展が11月末で終わってしまうのはいかにも残念と思っていたら、延長が決まったそうである。ならば1ヶ月後くらいにまた行こうかなと考えていたが、延長されたのはたったの1週間。こう言っては何だが、随分ケチな延長の仕方である。同じ延長でも、レオポルド館のロートレック展は3ヶ月くらい延長されているというのに。
帰りにがけに10ユーロでカレンダーを購入。家に買えって値札をはがしてみたら、下から15ユーロの値札が現れた。こりゃ12月に入ったら5ユーロで買えたかもしれん、早まったと少しガッカリ。さらにカレンダーの中に私の気に入った絵がそれほど入っておらず、それにもガッカリ。
しかし本物の迫力に感動できたので、細かいことは本当はどうでもよろしい。豊かな時間を過ごせて満足できたことが一番であった。



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(C) Hana 2003