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軍用機

先の対イラク戦争の際、オーストリアはこれまで認めてきたアメリカ軍用機の自国上空通過を禁止した。オーストリアは(まだ一応)永世中立国なので、どっかの国の戦争に荷担するわけにはいかん!というわけである。
しかし許可が無くともアメリカ飛行機が何気な〜くオーストリア上空を通過しちゃえというノリで、領空侵犯を試みることがある。(と、少なくとも緑の党は今年の2〜5月あたりに当時何度も主張していた。その後、そんな主張は何時の間にか立ち消えになってしまったが、いかがしたのだろう?)そういう時にはスウェーデン製2人乗りオーストリア軍用機ドラーケン (Draken) の出番だ!チロル上空を通ってバイエルンからイタリアへの近道をしようとするアメリカ軍飛行機に追いすがり、飛行機の身元を確認して写真撮影。後でオーストリア政府がアメリカ政府に領空侵犯について抗議する証拠を押さえるのである。(軍用パイロットの仕事が写真撮影とは、実に平和的だ。)

だがここに大きな問題がある。
現在オーストリア軍で使用されている2人乗りドラーケン23台はどれも1960年代に製造されたもので、もう型落ちどころかとっくの昔に製造中止になってしまった代物なのだ。当然部品も製造されないので、製造中止後にオーストリアの軍関係者が世界中を懸け回ってまだ残っている専用部品を買い漁って集めてきた。逆算してみると、オーストリア国防省は30〜40年も軍用機を使いまわしているわけである。これも中欧の小国ならではの節約術かもしれない。

しかしその倹約ももう限界に近い模様。製造中止になったオンボロ軍用機のためのパイロットは採算に合わないのでもはや養成されず、今は23台のドラーケンをたった17人のパイロットが乗り回しているのが現状なのだ。またパイロット不足のため、平常時にはドラーケンが朝の8時から夜の8時までしか出撃態勢にいない。つまり、この機密(?)を知った外国籍軍用機が今晩9時にオーストリア上空を通過しようとすると、証拠写真も撮られずにまんまとオーストリアを通れてしまう状況にあるのだ。

「このままではいかん!」と危機感を抱いた連立政権は、「中立国なんだから軍用機なんていらない!」という野党の反対を押し切り、2003年7月1日に新軍用機ユーロファイター『タイフーン』18機の購入契約書にサインをした。(これが約20億ユーロという買い物で、政府は一番高い軍用機を選んだのである。もっと条件がよくてお買い得の軍用機があったとか、タイフーンには色々故障が多いらしいとか、整備費がかかり過ぎるとか、色々指摘されているがここでは省略。)この新型軍用機がオーストリアに納入されるのは、早くて2005年と見られている。
ところがだ、上記の古株軍用機ドラーケンの整備サービス契約が今年いっぱいで切れてしまう。ドラーケンを製造した会社が、「これ以上こんなオンボロ軍用機の安全性を保証することはできぬ!」と整備サービス契約更新を拒否したのである。それについて国防省は「何とかなるさ」とコメントしていたが、そろそろ2003年も終わりに近づいているのに何とかなりそうにもない模様。

……この手抜かり具合が何ともオーストリア的である。
ドラーケンとタイフーンの橋渡しとして別の軍用機をリースする案もあるそうだが、それなら納入が早くてもっと安い別の軍用機に決めればよかったのにと素人の私でも考えてしまう。これに対する政府の言い訳は「タイフーン購入の代価として、製造会社の EADS は2015年までに203%(つまり40億ユーロ)もオーストリア経済にお返ししてくれると約束してくれたから」とのこと。一見うまい話だが、どういう形でお返しが来るのか、そもそもこんな交換条件が成立し得るのか、経済素人の私にはチンプンカンプンだが、どうも怪しげな話ではある。

まぁ今のドラーケンだって写真撮影にしか役立っていないのだから、(緑の党の主張している通り)軍用機無しでも実はやっていけるのかもしれない。何かあったらお隣さんのイタリアとドイツが助けてくれるだろうし。だけど一応は高価な最新鋭の軍用機を持って、自国領空を守る格好はしていたい。これがヨーロッパのチビ中立国の意地というものなのか……。

さらに、一応オーストリア政府は最新モデルの軍用機を購入はするものの、金が足りなくてフル装備してあるのは18機中たった3機だか4機しかないそうである。あとは「速くていかつい二人乗りの軽装備してある飛行機」としてくらいしか役に立たない模様。 速くて最新鋭のフル装備してある軍用機4機プラス軽装備の14機と、ちと流行遅れだがフル装備してある18機の軍用機。実戦に役立つのはどちら?

参考:
これに関しては色々と Presse の新聞記事を読んだのですが、この前机の整理をした時に切り抜いておいた記事も捨ててしまって、どの記事をどう参考にしたのかわからなくなってしまいました。興味のある方は Presse で利用者登録をしてから記事検索で “Abfangjäger” と検索をかけてみて下さい。ゾロゾロ該当記事が出てくるはずです。



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(C) Hana 2003