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天使の声募集

世界中で大人気のウィーン少年合唱団だが、昔はともかく現在の地元での人気はいまひとつのようだ。これは浅草住民が雷おこしを、草加市民が草加せんべいを大してありがたがらないのと似たような心境か。

ちまたに「ウィーン少年合唱団はめちゃくちゃスパルタ」という噂が流れているので、「食糧難の時代ならいざ知らず、この御時世に誰が大事な子供をスパルタ寄宿舎に入れるものか!」と思っている親が多いらしい。また学校も全寮制なので、「子供と離れ離れに暮らすなんてとんでもない」という声も聞く。
真の理由が何であれ、ウィーン少年合唱団員のなり手が見つからない。少し前には市報やテレビニュースでまで「合唱団員募集中!」と宣伝されていた。

一応今でもウィーン少年合唱団という名前を冠してはいるが、ウィーン出身の団員も減っていく一方で、今は団員の60%を占めるのみと嘆かれてたりしている。(これでも十分多い気がするが、きっと昔はもっとウィーン出身者がいたのだろう。)もはや変声前の男の子であれば、出身地にも国籍にも関係なく入団できる。ならば女の子も入れればいいのにと思うが、それは合唱団の伝統にそぐわないからダメだそうだ。

国全体が豊かになったこととも関係あるのだろうが、結局のところウィーン少年合唱団の団員であることのステータスがかなり下がってしまった印象を受ける。昔の『我が国の文化使節団』が、市民にとってはいつのまにか『歌うウィーン観光宣伝使節団』または単なる『観光アトラクション』になり下がってしまったような。あるいはこれを、合唱団と地元ウィーン(オーストリア)との距離が大きくひらいてしまった故の後継者難と見てもいいのかもしれない。

Vienna Boys' Choir goes Pop いかに世界的な評判が高くとも、合唱団の基礎を支えているウィーン市民やオーストリア国民にとって魅力的な合唱団でなければ、後継者難はこれからも続くのではないだろうか。

取り敢えず「大昔の古臭い歌ばっかり歌っているわけではありませんよ!」というアピールも兼ねて、ウィーン少年合唱団によるポップソングCDも発売された。これはウィーン少年合唱団がクラシックにポップを歌っている不思議なCDで、人気のほうはいまひとつ。しかし合唱団運営者たちの暗中模索的苦労はうかがえる。(右の写真をクリックするとアマゾン.jp のこのCDに関するレビューが読め、ここでは全曲試聴できる。)
だがこんなCD1枚出したところで、後継者難が解消するわけもなかろう。

と思っていたらさにあらず。意外にも様々なメディアによる後継者募集の宣伝効果は大きく、入団試験は大盛況だったようだ。
その後の経過がニュースで流れたので見ていたら、テストに合格したのは受験者60人中たったの2人。競争率は30倍と実に厳しい。宝塚より厳しい。しかも後継者難だと言いながら、たった2人しか合格させないことにもたまげた。もしかして受験者が少ないのではなくテストが難し過ぎるのでは?と思ってしまったが、ウィーンの映えある伝統を守るにはこれくらいしないとダメなのかもしれない。
テストでは音感やリズム感を中心に見ていくようだが、それだけではないのだ。子供が楽しんで歌を歌っているのか、親の気持ちを押しつけられて合唱団に入りたいと言っているのではないか、ということをちゃんと見極めるそうだ。もし才能があっても、子供にその気がないようであれば合格させない。
……どこかの国の幼稚園や小学校お受験とは一見大違いである。

で、合格者の1人は「アキオ」君という名前で、お母さんは日本人であった。最近色々な外見の子供がウィーン少年合唱団にいるとは何となく思っていたが、やはり(ハーフだけど)日本人も混じっていたか、と少しまた驚いた。ちなみにこのアキオ君、お兄さん2人もウィーン少年合唱団に在籍している(いた?)そうだ。(子供3人をウィーン少年合唱団にやるというのはどうも親の意向が大きいような気もするが、それはアキオ君入団の足かせにはならなかったらしい。ここらへんがちょっと不思議でもあるが。)

ウィーンには音楽留学で来た日本人がそのまま住みつくケースが多いので、子供の日系オーストリア人がウィーン少年合唱団入りするケースもそりゃあるだろうなぁと納得。ウィーン少年合唱団の国際化も進んでいる模様である。



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(C) Hana 2003