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真ダニ (Zecken) について

真ダニというのはオーストリアの森や林によくいる蜘蛛亜綱(あこう)の一種で、現在全部で20種類以上もの真ダニがオーストリアだけでなく日本を含め世界中に生息しているとされている。真ダニは動物の皮膚に取りつき、吸血することで生命を維持しているが、その際に複数の感染症を媒介することが知られている。そのうち人間にとって最も危険とされているものがウィルス性の初夏脳炎と細菌性のボレリア症である。初夏脳炎を媒介する真ダニはオーストリア(ここここ参照)を中心に、中欧、東欧・北欧の一部(ここここ参照)などにおいて多く見られるようだが、その他の国ではあまりいないとされている。それに対しライム病ボレリア症(以下ボレリア症)は世界中に見られるポピュラーな感染症で、オーストリア以外の地域でも真ダニによるボレリア症感染は珍しいものではない。(しかし日本での発症はまだ一例もないそうである。)
それでは以下真ダニについて順を追って説明していく。


初夏脳炎
ボレリア症
その他の感染症について
真ダニによる被害を防ぐには
それでも真ダニに刺されたら……

真ダニリンク (日本語サイト×1、独語サイト×3)

最後に

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初夏脳炎 (Fruehsommer-Meningoenzephalitis = FSME)

この脳炎を媒介する真ダニは1000匹に1匹とも5000匹に1匹とも言われる。さらに脳炎真ダニに刺された場合でも感染率が30%と低いため、危険地域においても脳炎罹患の危険性がそれほど高いわけでもない。しかしこの脳炎の引き起こす障害は甚大で、稀には患者が死に至ることもある。それ以外でも手足に麻痺などの重篤な障害が残ることは多い。だがこれは予防注射によってほぼ100%予防できるため、注射の接種が推奨されている。子供も1歳からこの予防注射を受けることができる。

症状
潜伏期間は真ダニに刺された後3日〜28日ほどだが、多くは3日〜7日の間に症状が現れる。初期症状は風邪のようなもので発熱し、悪寒・頭痛・関節痛などの症状が見られる。これが脳炎の第一期で、2日〜4日ほどこの状態が続く。その後発病者の90%は回復に向かうが、残りの10%には風邪のような症状がおさまった後3日〜8日ほどして第二期の症状が現れる。
第二期には脳炎のウィルスが直接中枢神経を攻撃するため、患者はこの間高熱と関節痛に苦しむこととなる。第二期の脳炎を患った場合でも90%は後遺症もなく回復するが、10%の患者は回復後も様々な後遺症(麻痺、抑鬱、集中力の低下など)に悩まされている。後遺症の度合いや致死率は患者が高齢になるほど高くなる。

予防注射
初夏脳炎の予防注射は真ダニが活動を始める前の寒い時期に受けておくことが理想的である。それによって真ダニ発生までに十分な時間をおいて確実に免疫が作られるためである。
基本的には1度目の注射の後、1〜3ヶ月後に2度目の予防接種を受ける。その後9〜12ヶ月後に3度目の接種を受け、さらに3年ごとに接種を受けることで初夏脳炎の発症はほぼ100%防げると言われている。
ただ真ダニの活動期に予防接種を受ける場合にはなるべく早くに免疫をつけるため、通常は1度目の予防接種の14日後に2度目の予防接種を受けることが推奨されている。

オーストリアでは初夏脳炎予防のため、1月から7月までの間は通常より安い値段で注射を受けられる措置が取られている。ワクチンを直接薬局で買い求め(2002年の1月〜7月間の値段は大人16ユーロ、子供13.5ユーロ)、それを持って医者のところへ行き注射をしてもらう(オーストリア医師会から推奨されている医師による注射費用は10ユーロ程)。
また予防接種を受けていないのに真ダニに刺された場合、緊急措置として事後注射を受けることもできる。しかしこの注射の脳炎予防率は60〜70%と比較的低い上、子供はこの注射を受けられない。そのため予防注射を事前に受けておくことが一番安全であるとされている。

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ボレリア症 (Borreliose / borreliosis)

上述したようにボレリア症はほぼ世界中で見られる細菌性の感染症で、ほぼ100匹に1匹の真ダニがボレリア症を媒介する。また人がこれを保菌する真ダニに刺された場合、ほぼ50%の割合で感染すると言われている。(ドイツ全体でも1年に3万人から4万人もの人々が真ダニによるボレリア症に感染しているらしい。)残念ながらボレリア症を有効に予防する手段はない為(犬のボレリア症予防注射はあるのだが)、ボレリア症に感染した場合は早期に発見し治療を受けることが重要である。初夏脳炎に対する治療は対症療法しかないが、細菌性のボレリア症は発見が早ければ抗生物質によって根治することができる。

症状
ボレリア症の症状は多岐に渡っているため、診断が難しい例も多々見られる。この感染症は三期に渡って症状が現れるが、そういったサイクルに全く合わない症状も往々にしてあるため、ボレリア症の典型症状のみ注目するのは危険だそうである。

ボレリア症は1週間から稀には数年という長い期間に渡って潜伏する。しかし50%の確率で、ボレリア真ダニに刺されて数日から10週間くらいの間に刺された個所が赤く腫れてくる。この腫れに痛みはなく、治療をしなくても腫れが自然にひくこともある。だが適切な治療を受けないと、ボレリア菌は少しずつ感染の度合を広げていく。この第一期の症状としては頭痛、集中力低下、倦怠感、筋肉痛、発熱、眩暈、極端な発汗などが挙げられている。
ボレリア症の第二期においては、真ダニに刺されて数週間から数ヶ月の後に強い痛みを伴う神経炎が現れる。時には脳神経が障害を受けることもあり、そうした場合、患者は顔面麻痺や視力障害に悩まされることとなる。
さらに数ヶ月から数年の後にはボレリア症の第三期に突入する。この時期には筋肉の炎症、骨の痛み、皮膚が変色し紙のように薄くなる症状などが見られ、最悪の場合患者は死に至る。

これは発見が遅れれば遅れるほど治療が難しくなり、ボレリア症が慢性化する割合も高くなる。そのため、早期発見早期治療が何よりも大切だそうである。

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その他の感染症について

真ダニは初夏脳炎やボレリア症の他にもいくつかの感染症を媒介する。しかしオーストリアにおいてそれらに感染する可能性が比較的低かったり、例え感染しても健康な人間なら発症に至らないまま病原体を撃退ことができたりするため、ここでの言及は避ける。
しかし真ダニに刺された後少しでも怪しい症状が現れたのであれば、すぐさま医師の診断を仰ぐべきであることは言うまでもない。

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真ダニによる被害を防ぐには

通常真ダニは草むらや藪の中に潜んで宿主が通りかかるのを待っている。真ダニが高い木の梢から動物の体に落ちて来るというのは大きな誤解で、せいぜい地面から80cm程までの高さにしか生息していない。従って藪の中を歩いたり、草むらに寝転がったりすることを避ければ真ダニによる被害をある程度の割合で予防することができる。また長袖長ズボンといった皮膚を覆う服装もそれなりに効果的である。(なお、洋服を食い破って血を吸うまでの力は真ダニにはない。)しかし真ダニが服に取りつき、這い回って皮膚に到達することはあり得るので、長袖長ズボンでも注意は必要である。また明るい色の洋服の上では真ダニを見つけやすいため、洋服の色に留意することも間接的ではあるが真ダニ予防につながる。
真ダニは宿主の体に移ってもすぐには血を吸わず、時には数時間もかけて血を吸う場所を探し回る。その際には大抵血管の多い、皮膚の薄い場所が好まれるため、頭や首、肩、脇の下といった場所が狙われる。従って真ダニ地域へ入った後は体を入念にチェックすることでも真ダニによる被害を防ぐことができる。

上述したように真ダニは蜘蛛亜綱であるため、虫除けスプレーの中には真ダニに効果がないものもあるらしい。従って虫除けスプレーを過信することは危険である。

主に真ダニは3月から10月の間森にいると言われているが、正確には+5℃以上の気温があれば真ダニは活動を始める。そのためカレンダーよりも気温で真ダニの活動の有無を確認するほうが確実である。

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それでも真ダニに刺されたら……

蚊と同じように真ダニは血を吸う場所に部分麻酔をかけてから吸血行為に取りかかる。そのため宿主は自分が血を吸われていることに気づかないことも多い。この吸血の最中に真ダニから宿主へと病気が媒体されるため、真ダニに刺されていることを発見したらすぐさま真ダニを除去することが重要である。
初夏脳炎ウィルスは真ダニの唾液の中に含まれている。そのため保菌真ダニに刺されてしまえば初夏脳炎は宿主にそのまま伝染してしまう。それに対し、ボレリア症のバクテリアは真ダニの中腸にいるため、宿主に伝染するまでには真ダニが吸血を開始してから最低でも24時間ほどかかると言われている。従って例えボレリア真ダニに刺されたとしても、発見が早ければボレリア症への感染を防ぐことができる。

真ダニを取り除くには専用のピンセットでなるべく深く真ダニを掴み、ゆっくりと真ダニを潰さないように引っ張り出す。この際反時計回りにいくらかひねりを加えると真ダニを取り出しやすいとも言われている。この時に真ダニを潰してしまうと上述したボレリアバクテリアが真ダニから宿主の体内に注入されてしまうため、気をつけなくてはならない。また真ダニを除去するための様々な民間療法もある(火であぶる、油・石鹸などを塗る、セメダインやセロハンテープを使って取り出す等々)。しかしこういった方法は慌てた真ダニが中腸内のボレリアバクテリアを吐き出すきっかけにもなりかねないため、避けたほうがよい。
真ダニを除去するのに失敗した(真ダニの一部が体内に残ってしまった)場合や真ダニを完全に取り除けたかどうかわからない場合などは、医者へ行ってきちんとした処置を受けること。
真ダニ専用のピンセットは薬局やペットショップなどで売っている。

真ダニを除去した後には患部を消毒しておく。当該の真ダニが何らかの感染症を媒体している恐れが大きい場合にはその真ダニを医者に持って行き、検査してもらうことも可能であるらしい。

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真ダニリンク

外務省の真ダニ情報(らしきもの)
情報は2002年の6月に失効したと明示してありますが、真ダニに関する注意事項やウィーンで予防注射を受けられる保健所の場所など参考になることが書いてあります。また、日本国内での真ダニについての問い合わせ先も載っていますので、不安な方はそちらに質問をしてみるといいかもしれません。

――以下のサイトは全てドイツ語で書かれています――

Wald und Wiese  (森と芝生)
ドイツ語医学サイト Medizin Info の中の真ダニコーナー。真ダニに関する多角的かつ専門的で、量的にも十分な情報が素人にもわかりやすい形で書かれている。このページを書くのにも一番参考にさせてもらったサイト。真ダニのTico君がマスコット。

Europaeische Zeckeninformation (ヨーロッパ真ダニ情報)
ドイツのシュヴァ―ベンで1984年に真ダニに刺され、ボレリア症に感染した男性による真ダニサイト。自身の病気の経過やボレリア症の治療方法などについて多く書いてある。この方の場合、ボレリア症と診断されるまでに2年ほどの時間を要し、9回目の診断でようやく正しい診断を下されている。そのためボレリア症が慢性化し、現在でも様々な慢性症状に悩んでいるそうである。

オーストリア真ダニ公式サイト
オーストリアのあちこちで配られている真ダニパンフレットとほぼ同じことが書いてあるサイト。その他真ダニのスクリーンセイバーも配布している。

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最後に

私自身真ダニについて知らないことが多過ぎたことと、日本語ではネット上で真ダニについての正確で広範な情報がほとんどないため、今回色々と調べて真ダニについてまとめてみました。
ただこのページの情報は他のサイトや本、パンフレットなどを参考にして書いたもので、間違いや不正確な点などもあるかもしれません。ですからこのページはあくまで参考にする程度の気持ちでお読み下さい。その上で真ダニによる感染症の心配がある方は直接医師の判断を仰いで下さい。



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